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2026.02.04

【SW AI Seminar】17年分の高次元データが証明する「予測の力」。エンジニアがプライベートで挑む、期待リターン最大化への数理的アプローチ

「複雑な現実の問題を、いかに単純な数式で解くか」。それは、AIエンジニアにとって永遠のテーマです 。毎週水曜日に開催される社内技術セミナー。今回の登壇者である平田が選んだ題材は、一見意外なものでした 。それは、気象、血統、市場心理、そして膨大な過去実績が複雑に絡み合う「競馬予測」という名の、難解な多変量解析のフィールドです 。彼が7年間の研鑽で培った、データに対する誠実さと設計思想の深層に迫ります 。

1. なぜ「マーケット予測」の題材として最適なのか

平田がこのテーマに挑む理由は、単なる興味を超えた「データサイエンスにおける有用性」にあります 。

  • 高頻度・高品質な時系列データ: Web上には過去数十年分のレースデータが詳細に公開されており、解析の精度を極限まで高めることが可能です 。
  • 明確な経済的合理性の検証: 市場の歪み(期待値と実態の乖離)をAIで検出し、統計的な優位性を証明するという、ビジネスにおける「ROI(投資対効果)の最適化」に極めて近い構造を持っています 。
  • モラルあるデータ収集: 17年分・5万レースに及ぶ膨大なデータを、サーバー負荷に配慮した厳格なクローリング手法(5秒に1回の間隔)を用いて収集するプロセスを徹底しました 。

2. Mac1台で構築する、緻密な特徴量エンジニアリング

平田の解析は、一般的なノートPC(Mac)上で実行されていますが、その内部ロジックは非常に高度です 。

  • 数百種類の組み合わせ変数の定量化: 単なる走破タイムだけでなく、季節性(冬場の馬場状態など)や、内枠・外枠と騎手の相性といった、数百に及ぶ特徴量をカテゴリー別に設計 。
  • ランキングアルゴリズムの採用: 「1位」を点として予測するのではなく、全個体の相対的な強さを「LightGBM」によるランキング学習でスコアリングする手法を選択しています 。
  • NDCGによる精度評価: 予測の順位と実結果の乖離を最小化するための評価指標としてNDCG(Normalized Discounted Cumulative Gain)を採用し、モデルのチューニングを繰り返しています 。

3. 「勝率」ではなく「期待値」を最大化する設計思想

本プロジェクトにおける最大の技術的挑戦は、目的関数の定義にあります 。

「的中率を追うと、市場(オッズ)と同じ予測になり、長期的にはリターンが収束してしまいます 。大切なのは、市場がまだ気づいていない『真の能力』と『オッズ』の乖離をAIで見出すこと。これこそが、機械学習が最も力を発揮する領域です 」

2023年のデータを用いたシミュレーションでは、理論上の年間期待リターン152%を記録 。この結果は、市場における「統計的優位性」の存在を裏付けています 。

4. 理論を実運用へつなげる「冷静な自己批判」

平田は自身の成功だけでなく、「理論と運用の乖離」という失敗についても率直に語ります 。

  • 資金管理の罠(バーストのリスク): 確率的な下振れ(分散)に耐えうる投資戦略が欠けていれば、どれほど優れた予測モデルであっても持続不可能になることを実体験しました 。
  • 適応的学習の必要性: トレンドの変化や季節性の偏りを補正するため、月次でのモデル更新が不可欠であることを再定義しました 。

現在は、統計学的な投資手法である「ケリー基準」などを応用し、予測と運用の統合的な最適化を検討しています 。

5. 「本質的な課題」を解く、エンジニアのプライド

セミナーの最後に、平田は「UI(フロントエンド)の構築よりも、予測ロジックそのもののシンプルさを追求したい」と述べました 。

「現実の複雑な課題を、いかにエレガントな数式で解決するか。予測精度と経済的合理性の追求こそが、エンジニアリングの本質だからです 」

この、手段(技術)に溺れず目的(本質的な課題解決)を見失わない姿勢。それこそが、当社のAIソリューションユニットがクライアントワークにおいて、そして日々の研鑽において最も大切にしている価値観です 。

編集後記

セミナー後の会場では、平田が費やしてきた膨大な開発工数(推定市場価値5000万円相当)に対する感嘆の声が上がりました 。 しかし、彼を突き動かしているのは「予測不可能な市場を、データで解き明かしたい」という純粋な知的好奇心です 。

当社には、平田のように「解くべき課題」に熱狂し、自らをアップデートし続けるエンジニアが集まっています。あなたも、このストイックな探求の輪に加わってみませんか?


本セミナーは、エンジニアの技術研鑽と知見共有を目的に、社内限定で実施されました。

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