「あの時の会議のメモ、どこに書いたっけ…」「気合を入れてフォルダ分けのルールを作ったのに、数週間で崩壊してしまった」。日々の業務で、こんなメモの悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
毎週水曜日に開催されている社内向けの技術勉強会。第13回となる今回は、AIQユニットの中田和宏さんが登壇しました。テーマは「Obsidian × Claude で『活用できるメモ』をつくる」です。 事業会社でビジネス職とエンジニア職の両方を経験してきた中田さんが提案するのは、人間の「整理する手間」をAIに丸投げし、情報を「資産」として活用する画期的なアプローチでした。メモ整理のパラダイムシフトとも言えるその内容をお届けします。

1. なぜ私たちのメモは「死蔵」されるのか?
中田さんはまず、メモに求める3つの要件として「すぐに書ける(書き始めの摩擦がゼロ)」「後で見つかる(探す時間をかけない)」「そのまま使える(次の成果物の材料になる)」を挙げました。 しかし現実は、メールやエディタにメモが散らばり、整理にかける時間が書く時間を上回って挫折してしまうことがほとんどです。
また、活用する際にもシステムからExcel、ExcelからPowerPointへと転記の手間が発生し、流行りのAIツールに情報を渡すのにも毎回コピー&ペーストが必要になるという課題があります。 「この根本原因は、整理と活用を『人』がやっていることです。ここをAIに任せれば、メモは続くのではないか」と中田さんは語ります。
2. 最強の組み合わせ「Obsidian × Claude」の仕組み
そこで中田さんが行き着いたのが、ローカルのMarkdownメモアプリ「Obsidian」と、強力なAIアシスタント「Claude」の掛け合わせです。 この仕組みの最大のポイントは「見るのは人、整理して整えるのはAI」と役割を明確に分けている点にあります。
- ・AIが直接読めるローカルファイル: ObsidianのファイルはローカルのMarkdown形式であり、人間にもAIにも読み書きしやすいフォーマットです。
- ・ルールを書けばAIが守る: 保管庫(ボルト)の直下に「Claude.md」という運用ルール(常設指示書)を置くことで、AIが毎回それを読み込み、人が指定したフォルダ構成や分類ルールを守って自動で整理してくれます。
- ・見る道具(UI)もAIが作る: 「こんな画面が欲しい」とClaudeに頼むだけで、検索画面やダッシュボードなどの自作プラグインをAIがコードを書いて作成してくれます。
3. 業務からプライベートまで。広がる活用事例
セミナーでは、実際の画面を交えながら具体的な活用事例が紹介されました。
- ・日々の業務ノート管理: 議事録やリサーチレポート、日報などをObsidianで管理します。会議の文字起こしデータをClaude経由で取り込み、自作のプラグイン画面から「このノート(1on1や会議)に対して質問する」といった対話形式での振り返りが可能です。
- ・大崎のランチ選び(プライベート活用): 「時間」「天気」「予算」などを入力すると、条件に合った大崎周辺のランチを3択で提案してくれるダッシュボードを作成。食べた記録をつけるとトロフィーが付与されるゲーム要素も取り入れ、「まずは楽しい題材で仕組みに慣れる」ことの重要性を伝えてくれました。
- ・Kaggleの実験ノート: データ分析コンペ「Kaggle」の農場経営シミュレーションに取り組む際、毎日の試行錯誤の結果をAIに記録させ、APIと連携した対戦ダッシュボードを構築して次の施策を練るために活用しています。
4. セキュリティと拡張性の両立
質疑応答で特に注目を集めたのは、その「手軽さ」と「安全性」です。 業務の機密情報を含むメモを扱う際、クラウドサービスにデータを上げるのはセキュリティの観点から懸念があります。しかし、この仕組みはデータをローカルフォルダのみで保管するため、安全性が高く業務利用にも適しています。
また、一見複雑に見えるダッシュボードや独自のプラグイン画面も、「Claudeを使ってライブコーディングのような感覚で、30分もかけずに簡単に作れた」と中田さんは明かしました。Googleの「NotebookLM」のような対話型AIの便利さを、ローカル環境で自作できてしまう拡張性の高さがこの構成の魅力です。
5. メモが「自律的なエージェント」に進化する未来
現在中田さんが実践しているのは「個人で業務データをAIと蓄積する(ステップ1)」段階ですが、将来構想としてさらなる展望が語られました。 ゆくゆくはチームでのナレッジ共有(ステップ2)へと広げ、最終的には定型業務を自律的に実行できる「業務特化のAIエージェント(ステップ3)」を作り上げることを目指しているとのことです。
「枠組みを決めるのは人で、整えるのはAI」。テクノロジーを駆使して、人間が本来注力すべき「思考」に時間を使うための素晴らしいアプローチでした。
編集後記
「メモの整理」という誰もが一度は挫折を味わう身近な課題を、ローカルツールと最新LLMの組み合わせで見事に解決した中田さんのセッションでした。技術をただ使うだけでなく、「自分が心地よく・手間なく使える仕組み」へと昇華させる探求心は、まさにエンジニアリングの醍醐味です。
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