「こんなに深く関われるなんて、思ってなかったんです」
ある若手エンジニアは、プロジェクトの初期をそう振り返ります。
社会インフラに直結するシステム開発――聞こえは堅いですが、実際には膨大なデータを正確かつ効率的に扱う技術が求められ、複雑な環境下でのやりとりが日常的に発生する、挑戦しがいのある現場です。
今回ご紹介するのは、次世代型の計測データ収集・管理システム(通称:ヘッドエンドシステム)の開発・保守プロジェクト。その中で若手エンジニアたちがどんな学びを得て、どんな壁を乗り越えたのか――リアルなエピソードをお届けします。
社会インフラの「見えない縁の下の力持ち」
このプロジェクトが対象としているのは、全国の家庭に設置されているスマートメーターからの計測データを一元的に管理するシステムです。日々送られてくる電気・ガス・水道の使用量情報を収集し、管理システムや料金計算に必要な各種システムと連携させる役割を担っています。
全国100社を超える事業者とのデータ連携。膨大な数のスマートメーターから届く情報を、確実に、セキュアに受け取り、次のステップへと送り出す――その仕組みは、まさに「社会インフラの見えない縁の下の力持ち」です。
技術環境とプロジェクトの狙い
プロジェクトで使われているのは、Java、SpringBoot、PostgreSQL、AWS Auroraといった、モダンで業務系システム開発に適した技術スタック。バックエンドを中心に、JSPやJavaScriptでフロントの対応も一部発生します。
開発手法はウォーターフォールモデルがベースですが、クラウド環境での大規模検証(Aurora vs Cassandraの性能比較など)も進行しており、従来型と最新技術の融合が求められる現場です。
若手たちの挑戦は「基本設計」から始まった
ある若手エンジニアは、参画直後から特定エリア向けのスマートメーター対応システムのカスタマイズ開発に関わることになりました。
驚いたのは、そのタイミングがちょうど要件定義の終盤から基本設計に入るフェーズだったことです。「まずはテストや調査から慣れていくのかな」と思っていた矢先、いきなりの設計業務。戸惑いと不安がなかったといえば嘘になります。
しかし、現場には過去の設計書やソースコードが整備されており、仕様の全体像を徐々に掴むことができました。「どの部分が変更対象か」「どこに影響が出るか」を確認しながら、段階的に理解を深めていったそうです。
先輩エンジニアの丁寧なレビューにも支えられ、「仕様を考える」という仕事の面白さと難しさを学んでいきました。
成長エピソード①:複雑な仕様整理に挑む
とくに印象的だったのが、既存システムの保守対応の一環で行ったある不具合調査です。
一見すると単純なデータ不整合に見えたものの、原因は異なる通信方式による取り込み順序の違いに起因していました。
仕様書には記載されていないレアケースに対し、影響範囲を最小限にとどめながら対処する必要があり、実装だけでなく論理的な整理力と判断力が求められました。
調査ログや実装履歴を何度も読み解きながら、先輩のアドバイスも受けつつ、自分なりに仮説を立てて問題の核心に迫っていく――その過程で「自分の頭で考える力」が養われたと言います。
成長エピソード②:クラウド環境での大規模検証に携わる
もうひとつのチャレンジは、クラウド環境(AWS Aurora)における性能検証でした。従来使っていた分散型データベースの代替案として、Auroraを導入するかどうかの検討が進む中、比較検証を担当するチームの一員として参加しました。
大量データの高速処理や同時接続制御など、理論だけでは判断しきれない要素に対し、実際の検証を通じて知見を得ていくスタイル。仮説を立てて検証条件を設計し、パフォーマンス結果をレポート化するまでの一連の流れは、これまでにない経験だったといいます。
「検証で得られた結果が、次の意思決定に活かされた」という手応えは、自信とやりがいに直結しました。
信頼は「聞くこと」から始まる
このプロジェクトで学んだことのひとつが、「聞く力」の大切さです。
「分からないことはまず聞く。そうしないと、仕事が止まってしまうし、誤解したまま進めても誰のためにもならない」
そう語る若手エンジニアの言葉の背景には、チーム全体の「聞きやすい空気」があります。先輩たちは、質問を歓迎し、丁寧に対応してくれる。その安心感が、積極的なキャッチアップや前向きな提案を後押ししてくれます。
最初は質問するのも緊張していた彼らが、やがて自分の言葉でお客様に説明し、仕様を調整するようになる――その成長の軌跡は、まさに「信頼される技術者」への第一歩といえるでしょう。
未来を照らす技術とチーム
現在、プロジェクトではさらなる地域や次世代スマートメーター対応へと展開が進んでおり、仕様検討から保守開発までを一貫して担う体制が構築されています。
若手エンジニアたちも、「次は設計全体を主導してみたい」「クラウド基盤の構築にも挑戦してみたい」と、次のステップを見据えた目標を口にしています。
自分の書いたコードが社会インフラの一部として動き続けている――その責任感と達成感は、他では味わえないものかもしれません。
読者の皆さんへ
いま、目の前の仕事がどんな価値につながっているのか、実感が持ちづらい瞬間もあるかもしれません。でも、一つひとつの仕様確認やテスト、保守対応が、誰かの「日常」を支えている。それが社会インフラに関わる開発の醍醐味です。
このプロジェクトに参加した若手たちは、日々の積み重ねを通して、「見えない価値」に気づき、自分なりの成長を遂げてきました。
「自分も何かに挑戦したい」「誰かの役に立つ仕事がしたい」――そんな思いがあれば、きっとあなたにも、成長のきっかけが待っています。
私たちは、そうした成長をともに喜び合える仲間を、いつでも歓迎しています。