チーム開発では、単に技術力を高めるだけでなく、周囲と連携しながら価値を生み出す力が求められます。SESの現場では、プロジェクトごとに異なる環境やメンバーと協働する機会が多く、早期にチーム開発での立ち回り方を学ぶことが重要です。本コラムでは、3年目までに意識すべきポイントを、具体的なエピソードとともに紹介します。
1. 質問の仕方を工夫し、信頼を得る
開発現場では、分からないことを適切に質問できるかどうかが成長スピードに大きく影響します。ただ単に「分からない」と言うのではなく、どのように考えたのかを説明しながら質問することで、的確なアドバイスを得やすくなります。
また、開発案件では時間が限られており、適切な時間を区切って考えることも重要です。当社では、若手社員に対して「30分考えてみて」と伝えるようにしています。これは、無制限に悩むのではなく、後工程を考慮しながら時間を意識しつつ、自分で考える習慣をつけるためです。時間の大切さを理解しながら、質問の仕方を工夫することで、成長のスピードを加速させることができます。
エピソード:質問の仕方を変えて、先輩からの対応が変わった話
新卒1年目のAさんは、大手企業のシステム開発プロジェクトに参画し、日々の業務に奮闘していました。しかし、分からないことがあるとすぐに「分かりません」と先輩に質問してしまい、「30分自分で考えてみて」と言われることが増えていました。
ある日、先輩から「質問するときは『自分なりにここまで考えたけど、こういう解釈で合っていますか?』のように、考えたプロセスも伝えるといいよ」とアドバイスを受けました。そこで、Aさんは自分なりに調査した内容や仮説をまとめた上で質問するように変更。その結果、先輩の反応が変わり、具体的なアドバイスをもらえるようになり、理解が深まりました。
ポイント
- すぐに「分かりません」と言うのではなく、考えたプロセスを伝える
- 「こう解釈しましたが、合っていますか?」と確認することで、的確なフィードバックを得られる
- 適切な時間を区切り、自分で調査する習慣をつけることで、成長スピードが加速する
2. チーム視点で動き、影響力を高める
開発現場では、自分のタスクをこなすだけでなく、チーム全体を見渡して動くことが求められます。周囲の進捗を把握し、困っている人をサポートできるようになると、チーム内での信頼が高まり、より重要な役割を任されるようになります。
エピソード:チームのために動いたことで、サブリーダーに抜擢
2年目のBさんは、Webシステム開発プロジェクトに参画。最初は「自分のタスクをこなすこと」に集中していましたが、定例ミーティングで「他のメンバーの進捗が遅れている」という課題が浮上。プロジェクトリーダーも忙しく、フォローできる余裕がない状況でした。
そこでBさんは、チーム全体のタスク状況を確認し、自分の作業が終わったタイミングで「何か手伝えることはありますか?」と周囲に声をかけ始めました。例えば、APIの仕様書の確認を手伝ったり、後輩のレビューを行うことで、チームの作業が円滑に進むようサポート。結果的に、プロジェクトの進捗が改善され、リーダーから「チーム全体を見られる貴重な人材」と評価されました。
その後、3年目に入る前にサブリーダーに抜擢され、チームを支える立場に成長しました。
ポイント
- 自分のタスクだけでなく、チーム全体の状況を把握する
- 他のメンバーが困っているときに手を差し伸べることで、信頼を得る
- 影響範囲を広げることで、キャリアアップの機会が生まれる
3. 顧客視点を意識し、提案力を身につける
SESの現場では、顧客とのコミュニケーションが発生することも多く、単なる作業者ではなく、課題解決の提案ができる人材が求められます。顧客の視点に立ち、業務の効率化や改善策を提案することで、信頼を得られるようになります。
エピソード:顧客折衝のチャンスを活かし、信頼を得る
3年目のCさんは、システムの運用保守プロジェクトに携わっていました。主な業務は障害対応や定型業務でしたが、「単なる作業者ではなく、もっと主体的に関わりたい」と考えていました。しかし、顧客と直接やり取りする機会が少なく、どうアプローチすればよいか分からない状況でした。
そんな中、顧客から「最近システムが重い」との問い合わせがあり、対応を任されました。Cさんは過去の障害対応ログを分析し、パフォーマンス低下の原因が特定のバッチ処理にある可能性を発見。単なる報告だけでなく、「実行タイミングを変更すれば負荷が減る可能性があります」と提案しました。すると、顧客から「こういう提案があると助かる」と高く評価されました。
これを機に、Cさんは顧客との打ち合わせにも積極的に参加し、次第に「Cさんに相談すれば何とかしてくれる」と信頼を得るようになりました。その結果、3年目の終わりには、顧客対応を主導する立場へと成長しました。
ポイント
- 顧客の課題を自分ごととして捉え、解決策を考える
- ただ問題を報告するだけでなく、改善提案をセットで行う
- 信頼を得ることで、より責任のある業務を任されるようになる