「これを作って」と指示されたものを作るのは得意だけれど、「何を作るべきか」「どうビジネスとして着地させるか」を問われた途端、手が止まってしまう。そんな経験はありませんか? 毎週水曜日に開催されている社内勉強会。第9回目となる今回は、AIQユニットの田渕雄夢さんが登壇し、「正解がわからない仕事、どう進める? — 社内初プロダクト開発で学んだこと」と題したセッションを行いました。 昨年から社長直下の新規プロダクト開発チームに合流し、リーダーとして奔走してきた田渕さん。誰も正解を教えてくれない未知の領域で、彼はいかにしてチームを導き、プロダクトを形にしていったのでしょうか。そのリアルな奮闘記と、不確実性を乗り越えるためのエッセンスをお届けします。

1. エンジニアを悩ませる「誰も正解をくれない」というプレッシャー
近年、技術の進化スピードが早まる中で、エンジニアに求められる役割も変化しています。田渕さんは冒頭、「POC(概念検証)から本番サービスへ昇華させるにはどうすればいいか」「技術的に陳腐化しないためには?」といった、スピード感とスコープの広さが求められる相談が増えていると指摘しました。 これらの共通点は、「正解を誰もくれない」こと。正解がないため、計画が書けず手が止まってしまうのです。 田渕さんは、この「わからないもの」の解像度を上げるため、不確実性を3つに分類しました。
- ・目的の不確実性: 何を作るべきか、何を目指すべきかがわからない
- ・方法の不確実性: どう作ればいいか、どう進めればいいかわからない
- ・伝達の不確実性: 認識が合っているのか、相手が何を考えているのかわからない
この不確実性の正体を見極めることが、次の一手を打つための第一歩となります。
2. 突破口は「仮説思考」——無仮説から脱却し、小さく試す
では、正解がわからない仕事にどう立ち向かえば良いのでしょうか。田渕さんが導き出した答えは「仮説思考」でした。 名著『イシューからはじめよ』にも触れつつ、田渕さんは「情報を全部集めてから答えを出すのではなく、今ある情報で仮の答え(仮説)を置き、それを確かめるために情報を集めること」の重要性を語りました。 小さく仮説を立てて、試して、直す。このサイクルを高速で回すことが、正解のない道を切り拓く最強の武器になります。
3. 社内初プロダクト「パレトリ」開発の泥臭いリアル
セミナー後半では、実際に開発中のSaaSプロダクト「パレトリ(名刺・録音から提案のインサイトを抽出するツール)」での生々しいエピソードが語られました。
- ・「何を決めて、何を捨てるか」MVVからの組織づくり: チーム合流当初、メンバーはどう進めればいいか迷い、スピード感が出ない状態でした。そこで田渕さんは、自らMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の原案を作成し、社長や有識者とすり合わせを実施。主体的に動ける文化の土台作りに奔走しました。
- ・ユーザーヒアリングで仮説が覆る: プロダクトのコア価値を言語化するため、モックアップを作成し、ターゲット層(保険営業、社労士、コンサルタントなど)へヒアリングを実施。当初は「ToDo管理機能」が必要だという仮説を立てていましたが、実際のユーザーはそこに強い課題感を持っていませんでした。代わりに、「会うたびに顧客を覚えていて、接触タイミングを教えてくれる」という記憶と記録のサポートこそが真の価値だと気づかされたのです。
- ・作っては壊す、UIとアーキテクチャの模索: UI/UXやSaaSのアーキテクチャ設計においても、隣のメンバーに壁打ち(相談)しながら小さく検証を繰り返しました。時にはカオスになったUI構成を根本から作り直すなど、泥臭い試行錯誤を経て現実解に落とし込んでいきました。
4. 迷えるチームから、自ら決断するチームへ
「検証しても、最後の最後は正解は出ない。決断しなければならないフェーズが来る」と田渕さんは語ります。Amazonの「可逆な決断は早く、不可逆な決断は慎重に」という考え方を引用し、スピード感を持って決断していくことの重要性を説きました。 この1年の取り組みを経て、チームには大きな変化がありました。指示を待って迷っていたチームが、自ら仮説を立て、オーナーシップを持って決断できるようになったのです。 「正解がないということは、自分で正解を作っていいということ。それはとても面白いことなんです」。田渕さんのこの言葉に、プロダクト開発の醍醐味が詰まっていました。
編集後記
毎週水曜日に開催されている社内勉強会。今回は、AIQユニットの田渕さんによる、新規事業開発の最前線で得た「生きた知見」が共有される素晴らしいセッションでした。 「正解がない」ことを不安と捉えるのではなく、自ら問いを立て、仮説を検証し、チームで正解を創り上げていく。そんなワクワクするような挑戦が、当社の開発カルチャーの根底には流れています。 当社では現在、最新技術と仮説思考を武器に、共にプロダクトと組織を成長させていく仲間を募集しています。正解のない問いに向き合い、自らの手で未来を創り出すことに興味がある方は、ぜひ採用ページもご覧ください!