「AIを使えば、簡単にプロダクトが作れるのでは?」そんな期待を胸に開発に挑んだ新卒エンジニアたちが直面したのは、AI特有の難しさと思い通りにいかない壁でした。
当社で毎週水曜日に開催されている技術勉強会。第四回目となる今回は、AIQユニットの田渕さんを筆頭に、新卒の塚原さん、伊藤さん、高木さんが登壇。「新卒がAIとプロダクト開発を1周してみた」をテーマに、研修でのリアルな苦労と、そこから得た実践的な学びが語られました。
AIを使った開発で何につまずき、どう乗り越えたのか。現場のリアルなエッセンスをお届けします。

1. 曖昧な要望から「自走」できるエンジニアへ
今回の新卒研修のゴールは、「プロダクトマインドを持ち、AIを活用して自走して学び、曖昧な要望から仕様・設計・実装・説明まで進められる状態を早く作る」ことでした。 チームの上長である田渕さんは、この取り組みが当社の全社的な組織像(スカイウィルリブートプラン)の以下のような注力領域にも直結していると語ります。
- ・顧客課題の解決
- ・技術領域の統合
- ・AI活用
研修では「組織の育成」をテーマに、4週間で企画からプロトタイプ作成、AI機能の検証、Claude Codeを用いた開発までを一気通貫で経験しました。ここからは、新卒3名それぞれの奮闘に迫ります。
2. 綺麗なUIに騙されるな:「プロンプトの前に思考せよ」(高木さん)
高木さんが挑んだのは、面談のトランスクリプトからソフトスキルを抽出し、検索可能にする「コンピテンシー人材検索アプリ」の企画・プロトタイプ作成です。 Claude Designを活用し、すぐに「いい感じ」のモックアップを作成できた高木さんですが、先輩からのレビューで壁にぶつかります。「この機能はどこで必要なのか?」「この導線は誰が使うのか?」という指摘に対し、明確な回答を出すことができなかったのです。
原因は、自分自身の言語化が固まらないうちにAIに指示を出し、AIが出力した「それっぽいデザイン」にバイアスがかかってしまったことでした。 この失敗から高木さんが学んだのは、「Do the thinking before you prompt(AIに投げる前に自分で考えよ)」という鉄則です。機能ではなく「ユーザーがどういう時に使うのか」というユースケースやユーザーストーリーの視点で考えを落とし込んでからAIにぶつけることで、AIやチームメンバーと本質的な議論ができるようになると気づきを得ました。
3. AIの出力がずれる時、指示に何が足りないか(伊藤さん)
伊藤さんは、対話を通じてエンジニアの経験を引き出し、キャリアマップとして可視化するプロダクトの開発を担当しました。しかし、AI(LLM)の概念実証(PoC)フェーズで二つの大きな課題に直面します。
- 長時間の対話化: スキルシートの工程ごとにAIに質問させた結果、ヒアリングの検証が40分以上も続く事態が発生しました。
- 抽象度の偏り: AIが抽出したスキルが、どれも抽象度の高い既存のカテゴリーにばかり分類されてしまいました。
汎用性を保ちながらAIの出力を安定させるプロンプト作成の難しさに直面した伊藤さんは、「AI主体で進めると認識の届かない部分が生まれ、意図しないものができあがる」と痛感。 制約だけでAIを縛るのではなく、前提や目的、判断基準を明確に渡すこと、そして「抽象と具体のバランス」をとりながら汎用的なロジックで出力を制御することの重要性を語りました。
4. もらったレビューを成長の記録に変える:RPI手法の実践(塚原さん)
積し、個人の成長記録として可視化するダッシュボードを開発しました。 開発にあたり、AIに丸投げしないための「RPI(Research、Plan、Implement)」というAI駆動開発の手法を採用。既存コードの深い調査、フェーズごとの実装方針の策定、そして着実な実装とテストを段階的に進めました。さらに「ADR」という判断記録を残すことで、AIが同じミスを繰り返さない仕組み(ガードレール)も取り入れました。
塚原さんが強調したのは以下の2点です。
- 設計フェーズの地味な大変さ: 設計段階でAIが出力する数千行(2349行など)のドキュメントを読み飛ばすと、後で大きな手戻りやコスト増が発生します。
- 現場の業務フローを見極める大切さ: プロダクトを作る際は「現場のメンターの業務負荷を減らせるか」といった実際の使われ方を想定しなければ、真の価値は出せません。
AIに任せきりにせず、要所要所で人間が確認するフェーズ(ヒューマンレイヤー)を自ら設計することの重要性を力強く語りました。
編集後記
毎週水曜日に開催されている社内勉強会。今回は新卒メンバーがAIと真正面から向き合い、失敗と試行錯誤を経て掴み取った「生きた知見」が共有される素晴らしいセッションでした。
AIは強力な開発ツールですが、本質的な「思考」や「ユーザーへの共感」、「業務フローの理解」は人間にしかできません。新卒1年目からこうした本質に気づき、実践している彼らの姿は、当社の技術力向上とカルチャーの明るい未来を感じさせてくれました。
当社では現在、最新技術を活用しながら、共にプロダクトと組織を成長させていく仲間を募集しています。このような技術交流や課題解決のプロセスにワクワクした方は、ぜひ採用ページもご覧ください!