あらすじ
担当外の機能で発生した謎のバグ。
「ログを読めば分かるはず…！」と意気込むユウタだったが、気づけばログの海に沈没寸前。
そこへ現れたのは、落ち着いた表情の先輩――。
「ユウタ、闇雲に泳いでも出口は見えないぞ。デバッグには“型”があるんだ。」
ユウタ：「先輩……助けてください。ログが、もう……読んでも読んでも終わらないんです。
しかも、どこが悪いのか全然わからなくて……！」
先輩
「お、ユウタ。ついに“デバッグ地獄”に足を踏み入れたな。」
ユウタ
「やっぱり、地獄ですか……（遠い目）」
先輩
「まぁまぁ。誰でも一度は通る道だよ。
でもね、実は抜け出すための“地図”があるんだ。」
ユウタ
「地図！？くださいそれ！いますぐ！」
先輩
「慌てるな（笑）。その地図ってのが、“調査の型”なんだ。
俺がいつも意識してるのはこの3つ。
“再現性100％ルール”“二分探索思考”“仮説ログ仕込み”。
これを順番に使えば、どんなバグも怖くない。」
①再現性100％ルール：まずは「必ずバグが起きる手順」を特定する
先輩
「まず最初は“再現性100％ルール”。
つまり、“どんな手順で必ずバグが出るか”をハッキリさせること。」
ユウタ
「あ、確かに。さっきは『ときどき直るんですよね』って言われて、
とりあえずログ見てたら、もう混乱してきて……。」
先輩
「そうなると泥沼コースだな。
まずは“いつも確実に起きる条件”を見つける。
もし再現しないなら、環境やデータ、操作のタイミングを変えてみる。
『起きる条件』と『起きない条件』の違いを整理すれば、見えてくる。」
ユウタ
「なるほど……。つまり、原因を探す前に“現象を固定”するわけですね。」
先輩
「そう。再現が安定すれば、後は順番に絞り込むだけ。
焦って探すより、足場を固めたほうが結果的に早いんだ。」
②二分探索思考：問題箇所を「半分に絞り込む」
ユウタ
「足場を固めたら、次はどこを見ればいいですか？」
先輩
「ここで出てくるのが“二分探索思考”。
簡単に言えば、“半分に分けて確かめる”。」
ユウタ
「半分って……？」
先輩
「たとえば『画面が動かない』なら、フロント側の問題か、サーバ側の問題か。
どっちが悪いか切り分ける。これで調査範囲が半分になる。」
ユウタ
「おぉ、それなら効率的ですね。いきなり全部のコード読むより、当たりを狭められる。」
先輩
「そうそう。“ここは正常”を一つずつ潰していくのがコツ。
つまり、『原因を見つける』というより『原因以外を消していく』って感覚だな。」
ユウタ
「なんか、推理ドラマみたいですね！
“この関数は無実だ…”みたいな。」
先輩
「（笑）まさにそれ。バグ調査はロジカルな推理ゲームだよ。」
③仮説ログ仕込み：怪しい箇所の前後にログを入れて検証する
ユウタ
「範囲を絞れたら、最後は“仮説ログ仕込み”ですか？」
先輩
「そう。怪しい箇所の前後にログを入れて、
『この処理は実行されているか？』『結果は正しいか？』を確かめる。
まさに“仮説を検証するためのログ”。」
ユウタ
「なるほど…！ログを“読む”だけじゃなく、“仕込む”んですね！」
先輩
「そう。受け身じゃなくて、能動的に情報を取りに行く。
ただし注意点が2つ。機密情報は絶対にログに出さないこと。
それと、調査が終わったら忘れずに削除すること。」
ユウタ
「了解です！ 仮説ログを使えば、“どこまで動いてるか”がすぐ分かりますね。」
先輩
「その通り。『この関数が呼ばれてるなら、次はこっちを疑おう』って次の一手が早く打てる。
思考のスピードが全然違うよ。」
ユウタ
「うわぁ…なんか、“闇雲に探す”しかできなかった自分を反省します。
次からは“型”で進めてみます！」
先輩
「いいね。デバッグって、経験じゃなくて思考の手順で勝てる仕事なんだ。
焦らず、一歩ずつ。バグの正体は、必ずロジックの中にある。」
ユウタ
「はい！今日から“デバッグ探偵”として頑張ります！」
先輩
「おっ、いいタイトルだな（笑）。じゃあ俺は“捜査本部長”ってことで。」
🔧 応用ヒント
・再現性を高めると、上司やクライアントへの説明もスムーズになる。
・二分探索思考は、調査報告書の構成にも応用可能。「どこまで正常か」を段階的に示すと分かりやすい。
・仮説ログはチームナレッジ化が鍵。再発時の調査スピードが大幅に向上する。
・“原因を見つける”より“除外を積み重ねる”意識で、論理的な調査力が身につく。
先輩のひとこと
「デバッグって、バグと戦う仕事じゃない。
ロジックを味方につける仕事だよ。」