「数字には、誰かの暮らしが詰まっている——」
医療データを扱うプロジェクトに配属されて数カ月、ある若手エンジニアはそんな実感を抱くようになっていました。
大学を卒業して間もない4月。社会人としてのスタートを切った彼は、3か月の研修後ほどなくして「保険者向けの医療データ分析業務」に従事することになります。配属先は、診療履歴や健診データを活用し、医療費の動向や生活習慣病のリスクを可視化するプロジェクト。その業務は、まさに人々の健康と社会保障制度の持続性を支える重要な取り組みでした。
見えないデータの「意味」に挑む
このプロジェクトでは、主に市区町村などの保険者に向けて、医療データの集計・分析・可視化を行います。加入者数の推移や医療費の内訳を分析したり、健診データをもとに特定保健指導の対象者を抽出したり……エンジニアが手を動かすその先には、地域住民の健康づくりを支援するという社会的な意義があります。
ただし、それは一筋縄ではいきません。医療データは非常に複雑で、多種多様なコード体系、診療報酬制度の影響、健診の受診率のバラつきなど、構造的に難解な要素が絡み合っています。
若手エンジニアたちは、まずこの“見えない前提条件”に戸惑いました。データベースに格納されている数字は「正解」を教えてはくれません。例えば「検査Aの実施回数が少ない」と思ったら、それはそもそも対象者が限られていたり、記録の形式が異なっていたり。こうした点に気づけるかどうかが、分析の質を左右します。
Oracle SQLとExcelの間で鍛えられた「考える力」
プロジェクトでは、Oracle SQLを用いてデータの取込・加工・集計・抽出を行い、ExcelやVBAで資料を整形、自動化処理にはBATファイルを使うといった環境で作業が進められます。
一見すると技術的には「地味」な作業に思えるかもしれません。しかし、SQL一つ取っても、目的に応じた結合方法、集計関数、CASE文での条件分岐など、常に「なぜそのように書くのか」を考え続ける必要があります。
若手エンジニアの中には、SQL経験が浅かったメンバーもいましたが、「まずは書いて、先輩にレビューしてもらう」というスタイルで徐々にスキルを習得していきました。
最初はクエリの構文エラーに悩まされる日々。しかしある日、上司から渡された仕様書に対して、「この抽出条件では、該当者が漏れるのでは?」と指摘したところ、「よく気づいたね」と言われた瞬間。彼にとって、それは“考える力”が育ってきた実感を得た出来事でした。
働き方も“自律”が求められる
このプロジェクトは基本的に出社勤務ですが、個々のタスクにはかなりの自律性が求められます。クライアントの求める成果物に対して、どのような分析ステップを踏むか、どの順番で実装するかはエンジニアに大きく委ねられています。
若手チームの中では、日々のタスクの優先順位を自ら判断し、進捗を見える化する工夫も行われていました。例えばExcelのToDoシートを共有し、コメント欄でメモを残すなど、小さな試行錯誤が積み重ねられていたのです。
こうした中で特に磨かれたのが「タスク管理力」でした。同時に3件以上の分析依頼が舞い込むこともあり、納期の異なるタスクをいかに並行処理するかが成長の分岐点となります。
仕様の“曖昧さ”と向き合い、価値ある成果を生む
あるとき、特定保健指導の対象者を抽出する業務で、複数のデータ項目をまたぐ複雑な条件設定が求められたことがありました。健診結果に基づく「メタボリックシンドロームの判定」に使う条件式が仕様書に記載されていたものの、そのロジックにはいくつかの“解釈の余地”があったのです。
そこで若手エンジニアは、過去の類似案件の成果物や仕様書を徹底的に読み解き、上司とも議論を重ねました。そして最終的には、自ら改善案を提示し、仕様書そのものをアップデートする提案にまで至りました。
「ただのデータ処理係」ではなく、「業務プロセスの設計者」へと一歩近づいた瞬間でした。
チームの中で信頼を築くということ
このプロジェクトには社内エンジニア2名が常駐しており、日々協力して業務を進めています。若手であっても対等な“戦力”として見られる環境が整っているのも、この現場の魅力のひとつです。
データ分析の途中で「これは本当に正しい?」という疑問が浮かんだとき、臆することなく先輩やクライアントに質問し、対話を通じて課題を乗り越える——その姿勢こそが信頼につながります。
ある若手エンジニアがクライアントの担当者から「あなたにお願いしてよかった」と言われたとき、それは単なる成果物の完成度だけでなく、「対話」と「姿勢」が評価された証だったのです。
この先に見える、新たな成長のステージ
医療データの分析は、今後ますます重要性を増していく分野です。高齢化の進展、医療費の増加、健康づくり施策の多様化——そのすべてに、エンジニアの力が必要とされています。
若手エンジニアたちも、「次はPythonなどの言語を使った本格的な分析にも挑戦したい」「BIツールを使って、もっと直感的な可視化ができるようになりたい」と語っています。
彼らの成長意欲は、止まることを知りません。
あなたの仕事にも、きっと「意味」がある
仕事の中で「自分のやっていることに意味はあるのか?」と感じたことはありませんか?
医療データを扱うこのプロジェクトでは、まさにその“意味”を問い続ける日々が続いています。数字の向こうに人がいて、誰かの健康や未来に寄与している実感があるからこそ、前向きに取り組めるのです。
私たちの会社には、そうした成長と実感を得られるプロジェクトが数多くあります。
誰かの挑戦が、誰かの背中を押すこともある。
あなたも、誰かの成長から学び、自らの成長につなげていきませんか?